品格ある日本人の英語
「品格ある日本人の英語」(曽根宏著 ビジネス社)

以前紹介した「英語のバカヤロー!」を読んで共感された方にはお勧めの本です。著者は、マッキンゼーで、海外企業と日本企業の提携やM&Aを手掛けられるなど活躍された後、現在は、M&A専門の米国のコンサルティングファームの日本代表を務められる傍らで、個人並びに企業に英語・国際化の研修を行う会社を経営されています。まさに「使える英語」でキャリアを築いてきた方ですね。

「品格」をタイトルにしたのはちょっともったいないかな、と思いますが、タイトルの意味は、「英語の表面的な流暢さや発音のうまさではなく、(大切なのは)話し手の英語を聞いた人が感じる、その人の人格、経験、知性」ということを伝えたかったのだと、作者も何度もこの本の中で強調されています。

この本で書かれていることは、「英語のバカヤロー!」と同じで、「大切なのは、発音じゃなくて中身」ってことです。海外でスピーチするたびにスタンディング・オベーションが起きたソニー創業者の盛田昭夫さん、「英語でしゃべらナイト」でパックンさんを、「英語をここまで使いこなせる人を知りません」と感嘆させた元国連事務次長の明石康さん、マッキンゼーの大前研一さんやといった方々や、ご自身の経験を踏まえ、ネイティブ信仰よりもっと大切があることを伝えてくれます。

いろいろと印象に残ったエピソードがあるのでいくつかご紹介します。

ある女性が米国に留学した時、「日本語訛りをなくすな。あなたが英語を話すことを“普通”と思われてもダメ。相手の制空権に好んで入るのは、つまりネイティブ・スピーカーのように話そうとするのは、立場が下だとみずから宣言するようなもの」と米国人の先生に言われたそうです。これはビジネスの世界でも言えることですね。商談の席では、文法の間違いや発音なんて気にしていられません。いかに自分の主張を相手に伝え、交渉をまとめるかがすべてです。

著者はかつて駿台予備校に通っていたそうで、「受験英語の神様」伊藤和夫さんに習ったそうですが、英文法の枠組みを英文解釈に取り入れた授業が嫌で嫌でたまらなかったそうです。ところが、最終回の授業で伊藤さんは、自分の授業はあくまで大学合格のための手段であって、合格したら英文を解析する勉強をやめて、とにかく大量の英語に触れ、英語経験を積んで、世界で活躍してください、との言葉を生徒にかけたそうで、それに著者もいたく感動したとのこと。これはTOEICでも同じですね。私がご紹介しているTOEICの予想問題等のTOEIC対策はあくまでTOEICのスコアアップのための手段に過ぎません。

この本の中では、TOEICは体力測定や英語学習のインセンティブにはよいけれども、それで英語力を測定しようとするのは「愚の骨頂」と書かれています。これはその通りだと私も思います。

この本には、盛田さんや明石さん、緒方貞子さんなどの英語や、ご自身の日本人英語も収録されたCDも付属しています。その中で私が一番感動したのは、同時通訳として活躍されている新崎隆子さんのスピーチです。

「RとLを区別して発音できなくても英語は通じる。三人称単数現在の-sが抜けても、誰も気にしない。それよりももっと積極的にしゃべってほしい。世界の人たちは日本人が生き生きと楽しそうに英語を話すことをきっと歓迎してくれるに違いない」

新崎さんも例として挙げていらっしゃいますが、「Congratulations!」のrがlに聞こえても、sが抜けていても、big smileで相手に、「Conglatulation!」と言えば通じます。完璧な発音でも全然感情がこもっていなければ意味がありませんよね。

「rとlを区別できないとネイティブに知性を疑われる」と発言した日本の外交官を例にとり、「Ladies and gentlemen, as English teachers, would you accept his advice?」と、美しい声で堂々と「Japanese English」で聴衆に問いかける新崎さんのスピーチを聴けただけでもこの本を買った価値がありました。こういう風に堂々と「Japanese English」で話せるようになりたいものです。

最後にこの本の著者に一つ苦言を。「伊藤和夫」が「伊藤一夫」、「基本英文700選」が「英文説明700選」と誤表記されていたのはいただけません。感動のエピソードなのにちょっとがっかりです。ちょっと調べれば分かることなのにもったいないです。


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>「RとLを区別して発音できなくても英語は通じる。三人称単数現在の-sが抜けても、誰も気にしない。それよりももっと積極的にしゃべってほしい。世界の人たちは日本人が生き生きと楽しそうに英語を話すことをきっと歓迎してくれるに違いない」

またまた激しく共感です!!
逆の立場に置き換えればわかると思いません?我々、外国人の人が一生懸命しゃべってる日本語を、発音が違うとかって笑わないじゃないですか。何を言おうとしてるか、こっちも一生懸命聴こうとするでしょ?コミュニケートしようとするでしょ?

同じように、だーれも気にしないし笑わないし、向こうはむしろ、そんなこと気にせず話して欲しい、分かり合いたい、と思ってる。

それに逆に、もし笑ってくれれば、つかみはオッケー!です(笑)。そこから楽しい会話が広がったり、友達ができたりすることも多いですから!o(^-^)o
ころりん | URL | 2009/05/25/Mon 00:33 [EDIT]
新崎さんの英語聞いてみたいです!
新崎隆子さんの講演会にお邪魔したことがありまして、
深い悲しみの底から這い上がるように
通訳者になられたことを知りました。
とても知的な日本語を話される方で、講演会場で
「通訳席から世界が見える」を購入して
帰宅途中の電車の中で読んでさらに感動。
気の遠くなるような努力をして同時通訳になった
彼女の英語を聞いてみたいなと思っていました。

素敵な本の紹介ありがとうございます。
早速購入して読んでみようと思います。

izumi | URL | 2009/05/25/Mon 05:27 [EDIT]
ころりんさん
そうなんですよね。その例として、日産リバイバルプランを発表したときのゴーンさんの
日本語もCDに収録されています。あの時もぐっと迫ってくるものがありましたよね。
発音とかを超えた気持ちが伝わってきました。外国人の方が日本語を話そうとする
姿勢を見習ったほうがよいのではと思います。笑われると途端に無口になってしまいますから。

もちろんrやlの区別ができるに越したことはありませんが、そこに多大な時間を割くより、
まずは話すべき中身を磨きたいですよね。私も頑張らねば。
TEX加藤 | URL | 2009/05/25/Mon 06:54 [EDIT]
izumiさん
講演会に参加されたことがあるんですね。私は著書を2冊拝読したことがあります。
堂々と自信に満ちたきれいな声で話されていますよ。時間は短いですが、迫力が
あります。日本語訛りの英語ですが、はっきりゆっくりと大きな声で話されていますね。
話すべき内容をしっかり身につけることが大切だなって改めて感じます。
TEX加藤 | URL | 2009/05/25/Mon 07:00 [EDIT]
こんにちは
以前匿名希望で非公開でコメントさせていただいたものです。その後もいつも楽しみに読ませていただいております。ありがとうございます!

今日のこの記事懐かしくなって思わず書きました。私は大学受験で2浪し、それこそどっぷり受験勉強にはまったのですが、そのとき超お世話になった教材のひとつが、伊藤和夫の「英文700選」なんです。

受験科目としての英語は足引っぱりの科目だったのですが、「だまされたと思ってこれを全部暗記しろ」と予備校の先生に言われ、血のにじむ努力(自分で言うなっつうの)で暗記したら面白いように英語の点数が伸びたんです。
言い換えるとそれまで基礎が全くできてなかったのですが・・・
だから20年以上たった今でも大事にとっていて、今だに時々見直したりします。(今は新しいCD付きのものが出て最近そちらを買ったばかりでした)

あと、新崎隆子さん、以前にNHKラジオ講座のテキストの連載で初めて知ったのですが、その連載もとってもおもしろかったです。
例えば、会議や学会の同時通訳をされてたとき、日本人は同じ質問をするときも単刀直入に言わず、と~っても回りくどい言い方をして時間を費やした上に聞きたいポイントがずれている、などなど、なるほどと思うようなことばかりでした。

前も加藤さんに書いたのですが、(みんなわかってることでしょうが、)やはり話す技術がうまいにこしたことはないけれど、話す中身をとおしてその発信者の人となりがでるものだと私も強く思っています。

私にとってのその最たる人はあのダライラマ14世です。彼のお話を聞いたことはありますか?私は別に信心深くもなんでもないんですが、彼のスピーチは・・・言葉では表現できないです。決して流暢ではない英語、用いている語彙もごく簡単なものです。時々文法も間違っています。でも、それを超える魂から訴える何かがあり、引き込まれます。時に涙がでます。
深刻で難しい話をしても、そのあと「かっかっかっ!」と笑いとばすところも魅力のひとつなんですけどね。

こういう方々は加藤さんも例にあげてあるように他にもたくさんいらっしゃいます。みなさん、「言葉に信念が宿って」います。だから聞く者を惹きつけるのでしょうね。

ただ一方、だからといって話す文法が全くめちゃくちゃでもよいとは思いません。私が同時に思うのは、聞き手の負担にならない英語つまり聞き手が一生懸命聞かないと理解できない英語は相手への思いやりとして(最低限の程度は)できるだけ避けたいです。

受験英語にどっぷりと浸かった経験者として、「読み書きなら結構いけるんだけど、話すのはちょっとね~」とは絶対言いたくないです。そんなの海外に行って(行かなくても)通用しないですよね。「だったらあんた何を学んだの?」と言われます(これは恥ずかしながら実際私の経験です)。

自分もこれからも上っ面の流暢さを目指すのではなく、魂が宿る日本語、英語を話せることを目指していきたいです。

TOEIC本番前に長々コメントしてしまい、読むのに貴重なお時間を割かせてしまい、大変申し訳ありません!(ブログはまだ開設しておりませんが(笑)、)これからも応援しております!!
ちいやん | URL | 2009/05/26/Tue 01:23 [EDIT]
ちいやんさん
またまた、熱いコメント、ありがとうございます。

「基本英文700選」、私は読んだ記憶がないのですが、暗記することで英語の基本構造が身に着いたのでしょうね。受験対策の基礎固めとしては正解だったのでしょう。途中で挫折する人がほとんどだと思いますので、暗記されたのは素晴らしいですね。

ダライラマのスピーチは画面を通してダイジェストでしか拝見したことがありませんが、引き込まれますよね。やはり言葉の後ろに人間としての器の大きさが感じられるからでしょう。

文法や発音がめちゃくちゃでいいとは私も思いません。ただ、基礎ができていて十分話せるレベルなのに、必要以上に発音を気にして話さないのはもったいないですよね。まあ、私もその傾向にあるので自戒を込めての記事です。

ではでは、今後ともよろしくお願いします。
TEX加藤 | URL | 2009/05/26/Tue 06:33 [EDIT]

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