英単語ピーナツほどおいしいものはない
「同時通訳の神様」國弘正雄さんの著書「國弘流 英語の話し方」に出てきて気になっていた本があります。それは、清水かつぞーさんの「英単語ピーナツほどおいしいものはない」という本です。

國弘さんといえば、我々の世代にとっては、松本道弘氏、東後勝明氏、村松増美氏などと並んで、英語学習者にとっては雲の上の存在のビッグネームです。余談ですが、「英語の神様と言えば誰?」という質問に対しての答えで世代が分かるかもしれませんね。私とおなじ40代なら、間違いなく國弘さんの名前がかなりの割合で挙がると思います。

とそんなことはさておき、そんな國弘さんが紹介していたのですから、読んだ時は「買おうかなあ」と思いつつ、いつの間にか忘れていたのですが、今、この本が売れているようです。

きっかけは、Google日本支社長の村上憲郎さんの「村上式シンプル英語勉強法」という話題書で紹介されたことです。私もこの本を立ち読みし(買えよっていう突っ込みはなしで)、「あ、そういえば買うの忘れてた」とばかりに早速金・銀・銅メダルコース3冊を購入し、銅メダルコースをやってみました。オリンピック時に書名がタイムリーなのもいいですよね。

で、やってみた感想としては、この本いいです! この本のポイントは、単語を「英→日」で棒暗記するのではなく、「日→英」のコロケーションで覚えるという点です。

未だに覚えているのですが、我々世代の定番だった「試験に出る英単語」の最初の単語が、「intellect」で、それに対して「知性」という訳語を覚える仕様になっていました。高校生の時、何度も挫折して最初からやり直したので、この単語だけは覚えています(笑) 

こうやって、一つの英単語に対して一つの訳語で覚えようとすると、応用が利かなくなるというデメリットがあります。例えば、TOEIC頻出語で、「sanction」という単語があります。私の場合、棒暗記で「制裁」という訳語が頭の中にすり込まれていたので、問題集で「承認」の意味で出てきた時に間違えた経験があります。

これに対して、「日→英」のコロケーション(連語)で覚えると、前後の単語の結びつきで覚えられるので、単語の持つイメージがつかめるようになり、訳語に縛られないフレキシブルな英語力が身に着くと思います。

例えば、前述の「intellect」なら、「知的に優れた人」という日本語が示され、その下に、「a su...ior int....ct」という英語が添えられ、「a superior intellect」と穴埋めして完成させます。この問題の前後に、同じ「intellect」や、派生語の「intellectual」といった単語のコロケーションが配置されています。

著者の清水かつぞーさんは、元々駿台予備校の講師だったので、受験生が覚えやすいよう、この本にはさまざまな工夫が施されています。コロケーションが覚えやすいような順番に配置され、見開きに1つピーナツのキャラクターがイラストで登場し、受験生を励ますメッセージを添えたり、章の合間に綴られている「英単語つれづれ草」というエッセイにも、受験生に対する愛情があふれています。

國弘さんの本にも書かれていますが、清水さんは、膨大な量のコロケーションを、自ら読んだ英文の中からピックアップし、それを受験生用にアレンジして、この単語本を作り上げたそうです。「売れればいいや」的な発想で作られた単語本とは一線を画する、読者への熱意や愛情や気迫をこの本には感じることができます。

短期間でTOEICのスコアアップを目指すための対策なら、もっと効率の良い本があるでしょうが、中長期的に単語力を身につけたいと思っている方なら手に取ってみる価値はあると思います(もちろん、合う合わないはあるでしょうが)。ちなみに私は、銅メダルコースの777のうち、分からなかったのが36個(約5.6%)ありました。答えを見て、「あ、そうか」と分かっても、意外と出てこないものですね。時間を見つけて銀・金メダルコースにも挑戦してみようと思います。

同じシリーズで是非ビジネス英語に的を絞ったTOEIC対策の本を出してほしいなあと思っていたのですが、残念ながら著者の清水さんはすでにお亡くなりになったそうです。誰かが後を引き継いで、同じぐらいの情熱をこめた本を作ってほしいものです。

TOEICで高得点を取るためのポイントの一つは、「flexibility」だと思います。ルールを覚えることは大切ですが、コロケーションを多数取り込んで、引っ掛け問題や応用問題にも対応できる、柔軟さを身に着けたいですね。ETS側は受験者に対していろいろな罠を張り巡らせてきますから、それを軽やかに交わしたいものです。


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