将棋とTOEIC(後編)
「先を読む頭脳」の共著者の科学者二名が、将棋のプロ同士の実戦譜の一場面を取り出して、プロの棋士に3秒で覚えてもらう実験をしたところ、なんと正解率は9割以上だったそうです。将棋の駒は全部で40枚ですから、持ち駒も含めてせいぜい3、4枚しか間違えないことになります。驚異的な記憶力ですよね。もちろんアマチュアだと、特に駒がたくさん動く中盤以降はこうはいきません。この部分は以下のように分析されています。

思考の中身を調べると、中級者ぐらいまでとプロ棋士の思考には決定的な違いがあることがわかってきました。それは、プロ棋士は思考の非常に早い段階で「(殆ど見た瞬間に)手の善し悪しがわかるという点です。明らかに、先読みを行う以前に「感触の良さそうな手」「味の良さそうな手」といったことがわかっているのです。

この違いは、アマチュア有段者は、やはり局面を定跡形という頭で覚えた知識に頼っているのに対して、プロ棋士は一局の将棋を一つの流れの中で、「絶対将棋観」とでもいう感覚で捉えているからではないかと考えます。したがって、全部の駒を見て覚えなくても、「ここにはこういう駒がなければならない」というような感覚で局面を再現できるのだと思われます。


極論ですが、これはTOEICでも同じことが言えるのではと思います。恐らくですが、R450点以上の方は、実際の試験の際、パート5では、ぱっと問題を見た時に、「TOEIC的あるいは英語的にここはこれしかない」といった「絶対TOEIC観」「絶対英語観」的な感覚で正誤を判断できるケースが多いはずです。「ありえない手を捨てる能力」ですね。

選択肢の中から、一見して良さそうな答えを見つけ、念のためにロジカルに他の間違いの選択肢を排除するイメージです。950点以上の受験者であれば、2つの答えのどちらかで迷うことはあっても、3つ以上の選択肢で迷うことはまずないはずです。ぱっと見で悪くても2択にできるので、解くスピードも正解率も当然上がります。その逆に、パート5が苦手な方は、あれこれ悩み、頭の中で文法の公式を一生懸命思い出すなど、「定跡」に頼るケースが多いのではないでしょうか。もちろん、こうした思考は、次なる飛躍のために必要なステップですし、TOEICの点数が上がるにつれて、次第に解答速度も精度も上がります。

では、どうやってこの「絶対TOEIC観」を身につけるかというと、羽生さんも述べているように、繰り返しによって「型」を身に着けるしかないのではと思います。まずは簡単な詰め将棋を解くように、基礎的な文法の知識を身につけ、その上で多読や問題演習によって型を感覚として身につけるイメージです。

将棋とTOEICの共通点として感じる点がもう一つあります。羽生さんのようなトップ棋士でも、めちゃくちゃに駒を動かした初心者同士の対戦の棋譜は覚えることができないそうです。「プロ棋士が指した将棋のような意味ある局面、将棋としてあり得る局面」に記憶力が限定されているわけです。これはTOEICでも同じで、ETSが製作した問題のクオリティが高いからこそ、高得点者が問題を覚えたり、正解を見つけられるのだと思います。逆に言えばそういう風に問題が製作されていることになります。

私もそうですが、素人将棋では、「飛車を成りたい」「金が欲しい」などと、目標から「逆算」して考えるケースがほとんどです。自分の王様がピンチなのに飛車成しか目に入らない(笑) ところが、上級者になると、見た瞬間にその将棋の流れと、その場面の位置付けが分かり、まずどうすべきかという結論が先に浮かぶのだそうです。つまり「順算」です。

これはとても面白いなあと思ったのですが、TOEICでも、「これが主語でこれが述語、これが関係代名詞で、空欄の後ろが動詞だ。ということは、空欄に入るのは副詞のはずだから、答えはコレだな」と逆算的に考えると、解くのにすごく時間が掛かりますよね。でも、ぱっと見て、「あ、ここはこれだな」と英文の流れで正解を選べれば、解答時間がずっと短縮されます。

とつらつらと書いてきましたが、要は、考えれば考えるほど将棋とTOEICって共通点が多いなあと改めて感じるのです(私の勝手な思い込みでしょうか)。ということで、「国際花子の憂鬱」「勝つためのTOEICメンタルトレーニング」に続くTEX加藤のTOEIC対策本第三弾は、「将棋で学ぶTOEIC」です。初版で絶版確実ですね(笑)

参考になる部分がありましたら、下にあるバナーなど押して頂けると嬉しいです。

banner2.gif  

Comment

管理人にのみ表示する

いやいや「国際花子の憂鬱」でベストセラー作家になれば、ネームバリューで何とか3刷りくらい楽にいきますよ(笑)

前の職場でTOEICの問題を一緒に作っていたネイティブと話したときに「TOEICはobviousだ」と言っていたんですよね。間違いようがないじゃないかって感じでした。TOEICは英語が感覚的に身に付いているかどうか、英語の習熟度を測れるようにうまく作られていますよね。

ただ、英語学習者にとっての緊急の課題は、どうしたらその感覚「英語の流れ」を身に付けられるかですよね。中村澄子先生が指摘されていますが、初学者は品詞問題で副詞を選ぶ問題にひっかかりやすいです。副詞の場合はある程度位置が自由になりますから、知識だけで解こうとすると引っかかりやすいのでしょう。でももし、僕がTOEICの教師だったら副詞の問題を解けるようになるために「1000問解け」とか「100冊英語の本を読め」とは生徒さんに言えませんよね。TOEICの出題範囲はけっこう狭いから、頻出パターンをリスト化、チャート化して知識として伝えることになりそうです。けれども「本物の英語力をつけたい」「話したり書けるようになりたい」という方は、神崎先生が提示されているような、頻出例文を暗記したり、コピーイングや瞬間英作文ができるようになるまでやり込むことが近道なのでしょうかねえ。
Yuta | URL | 2009/02/19/Thu 22:13 [EDIT]
膨大なインプット
TEX加藤さんの膨大なインプットには頭が上がりません(笑)1日に何ギガの情報をインプットしているのでしょうか(笑)本当にいつも内容のある記事で学ぶことが多いです。
「絶対TOEIC観」という造語気に入りましたよ(笑)おそらく将棋からのアプローチでTOEIC論を語れるのは日本で一人しかいませんよ。これは一番出版に近いように思います。
k2 | URL | 2009/02/19/Thu 22:20 [EDIT]
Yutaさん
国際花子シリーズでいけますね。「憂鬱」「飛躍」「栄光」で行きます(笑)

確かに英語上級者にとってはTOEICはobviousですが、初心者にはunclearですよね。そこはよくできたところだと思います。

どういう教え方をするのかは、生徒のニーズやレベルにもよりますから、難しいところでしょうね。品詞問題ならおっしゃるとおり頻出パターンに慣れさせて、本番では全文ではなく前後の2語ずつを見てパターンに当てはめて答えさせる、といった手もあるでしょうし、英文法を基礎からやらせて英語力UPとスコアアップを同時にはかるという手もあるでしょうね。教える立場だと、相当のスキルが必要ですね。
TEX加藤 | URL | 2009/02/19/Thu 23:15 [EDIT]
k2さん
いえいえ。k2さんの読書量より少ないと思いますよ。私は蓄積したものを小出しにしているだけです。問題文の流れで答えを感覚的に察知する「絶対TOEIC観」があれば高得点が取れるとは思いますが、それよりも「絶対英語観」を身につけたいですよね。「将棋で学ぶTOEIC」いけますか(笑) あ、こんなアホなことを書いている間にSWテストの練習をしなければ。
TEX加藤 | URL | 2009/02/19/Thu 23:18 [EDIT]

Track Back
TB*URL

Copyright © TOEICオタクのブログ. all rights reserved.