夢の印税生活
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以下はフィクションです。

以前から本を出版したいと思っていた四十路サラリーマン加藤手苦巣氏は、趣味で受験を続けているTOEICで念願の990点を取得したのを機に、自らが3年かけてコツコツ執筆してきた「サルでもわかるTOEIC英文法」の原稿を出版社に持ち込みました。

当然、出版社としてもビジネスですから、無名の手苦巣氏の原稿は簡単には単行本化できません。業界大手の出版社には軒並み断られた末、幸運にも、たまたまTOEIC本の出版を始めようかと考えていた、落日出版から単行本化の運びとなります。「TOEICって名前が付いていればある程度の部数はさばけて大損はしないだろう」程度の考えだったのかもしれません。

素人の手苦巣氏が執筆した原稿は、ほぼ全面的に手直しを求められ、苦心惨憺の末、ようやくそれから1年後に出版されることとなります。「足かけ四年、苦労した甲斐があった。これで脱サラして夢の印税生活だ」と手苦巣氏が喜んだのもつかの間、出版社から届いた契約内容を見て手苦巣氏は驚きます。そこには以下のような内容が記されていたからです。

*印税率は初版が定価(税抜)の5%、重版から8%とする
*初版の印刷部数は5000部とする

ここから逆算した手苦巣氏の印税は以下の通りです。

「サルでもわかるTOEIC英文法」の印税
定価1500円(税抜)×5000部(初版)×5%=37万5千円

なんと、足かけ四年の努力がサラリーマンの給料1か月分です。それでも、「重版になるだろうし、まあいいか」と契約書に署名をした手苦巣氏は、本の発売後、アマゾンに自ら絶賛レビューを投稿し、インターネットの掲示板に自作自演の称賛コメントを投下し、店頭に足を運んでは棚差しになっている本を平積みになっている他のTOEIC本の上に重ねる、といった地道な営業活動を続けます。ところが、一向に出版社からの増刷の連絡は入らないのでした。

「出版の世界も厳しいなあ。でもまあ出版できただけでいい記念になるよ」と思い直した手苦巣氏に、しばらくして初版の印税の振り込み明細が出版社から届きます。封筒を開けた手苦巣氏の目に入ったのは、「37万5千円」ではなく、「1500円×3000部×5%=22万5千円」という数字でした。5000部刷ったものの、実際の販売部数は3000部で、残り2000部は出版社の在庫になっているのです。印税率の計算のベースとなったのが、「印刷部数」ではなく「販売部数」だったのです。契約書をよく見ていなかった手苦巣氏は、改めて出版ビジネスの厳しさを痛感し、脱サラをあきらめ、またサラリーマンの仕事を続けることにしたのでした。

これはあくまでフィクションで、もちろん契約条件は出版社や執筆者によって異なります。「先生、印税で儲かってるんでしょ」と教室で生徒によく言われるのですが、「印税=儲かる」という世間一般の考え方とは異なり、出版というのも厳しい世界であることは間違いありません。

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