私が普段TOEICの指導をしていて感じているのは、これと同じことです。自分の目標スコアを達成するためにはどうすればよいのか、それを自分で考えることがとても大切だと思うのです。その力がある人はスコアが伸びるのも早いのではないでしょうか。
私はこのブログを始めた当初、TOEICの問題を1万問解いて990点を達成した、という記事(2008年8月26日)を書きましたが、この方法を選んだのは、自分が990点を取るためにどうすればよいかを考え、これがベストであると判断したためです。
2008年6月にTOEICを受験する前の私のスコアは、2000年11月の950(L495 R455)でした。ということは、990点を取るためには、Rで495を取らなければいけません。もちろん当時はRで何問正解すれば495が取れるかなんて知りませんでしたが、Rで495を取るために、できるだけミスを減らす戦略を考えることにしたのです。
現状把握のため、まず公式問題集を解いてみると、パート7では、本文で根拠を確認せずに自分の思い込みで答えを選んだ問題以外は、ほとんどミスがないことが分かりました。つまり、パート7ではこの1点だけに注意すればいいわけです。
問題はパート5でした。公式問題集や模試を解くと、毎回3問程度ミスをしてしまいます。これを何とかしなければいけないので、ミスの内容を分析してみると、そのほとんどが文法問題、しかも同じようなタイプの問題であることが判明しました。一例をあげると、
The architect’s most notable ------- was winning the international competition for the design of the stained glass windows in the Danny Thomas chapel.
(A) achieve
(B) achieves
(C) achieving
(D) achievement
のような品詞問題で、「動名詞も名詞も同じようなものだから、(C)でも(D)でもよさそうだけど、語呂がいいから(C)にしよう」といった形で、フィーリングで答えを選んでミスをしていたんです。※念のため、この問題の正解は(D)です。
次に行ったことは、「FOREST」の該当箇所のページを読むことでした。たとえば、「動名詞」だけなら十数ページしかないので、その部分をしっかりと読み、内容を理解したら、模試を解いて正しく理解できているかをチェックする、という作業を行うわけです。このサイクルを繰り返すうちにミスの数が次第に減り、2008/6のTOEICで990を達成することができました。
問題をたくさん解くのが私にはあまり苦にならなかったのも、この方法を選んだ理由の一つです。苦行だと続きませんからね。自分が楽しく継続できそうな方法を自分で考えて実行することがスコアアップのためには大切でしょう。もちろん、問題解くのが嫌いであれば、自分で創意工夫して別の方法を考えればいいわけです。100人いれば100通りのスコアアップの方法があっていいと思います。
冒頭で紹介した本の中で、野村克也さんはこう書いています。
新人がプロで成功するかどうかは、「考える力」にかかっていると言った。だが、プロ入り間もない選手には余裕がない。そのため、選手の周囲に助言を与える者がいるかどうかが重要になる。
特に学生は、TOEICのスコアアップのために何をしていいかわからないので、それぞれに合った方法を見つけてあげるのも、我々講師の役割の一つです。講師の側にも「考える力」が求められますね。
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この本の著者の下野さんは、福岡県の春日南中学校の体育の先生です。NHKに出演された際の放送をご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、下野先生のクラスの三年生は、バック転やバック宙を決めたり、クロールで全員が1km泳げたりするんです。もちろん、入学時はごく普通の生徒たちで、まともに後転すらできない子や、10m程度しか泳げない子もいるわけですから、すごいなあと思って私もTVを見ていました。
そんな下野先生の指導のノウハウが詰まったこの本は、単に体育を教える人だけでなく、教える立場にある人であれば誰でも参考になる一冊だと思います。もちろん、私も学ぶべき点や共感できる点が多々ありました。いくつか印象に残った部分を以下でご紹介します。
子どもに必要なのは達成感
これはTOEICでも同じです。「聞き取れた!」「単語の意味が分かった!」「スコアが上がった!」という達成感こそがスコアアップの最大の原動力ですし、それを味わえるようにするのが我々講師の役割だと思います。達成感さえ感じられれば、我々が何もしなくても勝手に生徒は成長していきますから。
要するに教師は“できる”人。(中略)だから、“できない”人の気持ちがわからない。体育の先生に必要なのは運動能力より、まず体の動きを言葉に置き換える言語化能力なのです。
下野先生ご自身は、スポーツの世界で実績のある方ではありませんが、それでも生徒は素晴らしい成長を遂げています。これは我々の世界でもある意味同じで、英語力と指導力は全く別物です。英語のスキルだけでなく、生徒の気持ちになって、できる限りわかりやすく説明するスキルを磨く必要があります。これはとても難しいことで、私も反省と試行錯誤の毎日です。
何気なく発した一言、思わず出た行動。ほんのちょっとしたことを、子供たちは見ていないようで見ています。彼らは大人が思う以上に敏感なのです。
これは本当に私も痛感していることです。教える側が生徒との距離を置こうとしたり、生徒に遠慮したり、うかつな一言を発したり、思ってもいないのに褒めたりすると、生徒はそれに気づきます。私もそれで失敗したことがあります。逆に、こちらが心から生徒と一緒に喜んだり楽しんだりすると、生徒は共感してくれます。
下野先生の指導法を詳しく知りたい方は是非本書をご一読ください。
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日時:2011年4月29日(金・祝) 13:00~18:00(受付開始:12:30)
会場:朝日新聞読者ホール(朝日新聞東京本社2階)
講師:神崎正哉、工藤郁子、TEX加藤、天満嗣雄、花田徹也、早川幸治、横川綾子(五十音順)
参加費:5,000円 ※お預かりした参加費は日本赤十字社を通して東日本大震災の義捐金として寄付し、後日ホームページ、ブログでご報告します。
定員:60名
当日は、TOEICの各パート別に、さまざまなアクティビティを各講師が行う予定です。私は神崎さんとペアで、「TOEIC白熱教室(仮称)」と題し、パート6・7関連のアクティビティを行います。白熱せずに「不完全燃焼」になる可能性もありますが(笑)
イベントの申込および詳細につきましては、主催者の天満さんのHPをご覧ください。
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その時は、「まあそういうクラスもあるだろう」程度に考えていたのですが、先日、ハーバード大学のサンデル教授の授業や、「プレゼンテーションZEN」の著者であるガー・レイノルズさんのプレゼンを見ていて、ある原因に気が付きました。
二人ともプレゼンのエキスパートですが、共通しているのは、聴衆に質問を頻繁に投げかけ、その反応を見て、さらに次の質問を投げかけている点です。プレゼンする側が一方的に話している時間が少ないのです。
私の場合も、意識はしていませんでしたが、反応が良かったクラスでは、「僕はセガって会社で働いていたことがあるんだけど、知ってる人?」「お、結構いるね。セガって実はゲームだけじゃなくて、おもちゃも作ってるんだよね。知ってた?」「じゃあ、キッズコンピュータピコって知ってるかな?」「懐かしい、って声が聞こえたけど、ピコで遊んだことある人?」とどんどん生徒にこちらから話しかけて、反応を見てさらに次の質問を投げかけていきました。
ところが、反応が薄かったクラスでは、最初の反応の薄さを見て、「面白くないのかな」とこちら側が思ってしまい、あまり質問を投げかけることなく、かなり一方的に話してしまったんです。それでは生徒も退屈になりますよね。こうした反省点を、今年は授業にもできるだけ反映したいですね。気が付くと一方的に話していることが多いので。
最後に、上記のレイノルズ氏のプレゼン中、「プレゼンの良い見本」として紹介され、観客がその姿を見ただけで爆笑していたのは、マイクロソフトの最高経営責任者のSteve Ballmer氏です。彼のプレゼンのハイライトを集めた動画を是非ご覧ください。特に、2分ごろから始まるTV CMのシーンは圧巻です。他の誰にも真似できないスタイルですが。こういうスタイルで、「先読み、先読み、先読み、先読み…」って絶叫するTOEIC講師がいたらインパクトあるでしょうね。まあ、さすがにそれは無理としても、自社商品をここまで熱く語れる情熱は見習いたいです。格好いいなあ。
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私が読んだ「中学の学級経営 黄金のスタートを切る“3日間のネタ”110」(向山洋一・田上善浩著/明治図書)には、授業初日の教師の最初の言葉について以下の一節があります。
どんなことでもいいのですが、必ず自分自身の体験から出たことを言うべきです。
名言集などをみて、何か見つくろうのはいただけません。
自分自身が、「本当にそうだ」と思っていることでないと、言葉が心に届かないのです。
昨年、私は授業初日に、自分が企画に携わった家庭用プラネタリウムのサンプルを持ち込んで、着想から企画実現までの話をしました。何の話をしようかなあと試行錯誤した挙句、実体験を例にとって「あきらめないことの大切さ」を伝えようとしたのは、理にかなっていたのかもしれません(話が受けないクラスもありましたが、それはプレゼン方法に問題があったからで、それはまた別途記事にしたいと思います)。
これはサラリーマン時代も感じていたことですが、実体験に基づく言葉の方が、他人の言葉を引用するよりはるかに聞き手に伝わります。「イチロー選手が一本一本のヒットを積み重ねて大記録を達成したように、毎日勉強を地道に積み重ねることが、TOEICで目標スコアを達成するには大切です」って話すよりも、「周囲からは絶対無理って言われたけど、自分を信じてあきらめずに頑張ったら、2年かけてこの家庭用プラネタリウムを形にすることができました。皆さんもあきらめずに努力すれば、きっと目標スコアは達成できます」って言った方がきっと説得力があるでしょう。
こうして自分の実体験から、自分が「本当にそうだ」と思うことを、熱意を込めて生徒に伝えようとすれば、その言葉が伝わるだけでなく、「この先生は一生懸命だ」という印象を生徒に与えますよね。
今年も授業初日の「黄金の一言」は、実体験に基づく言葉で、何か生徒にメッセージを伝えたいです。二年生には二年続けて同じネタはまずいから、何か別の話をしないとなあ。
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ただ、ここで考慮に入れなければいけないのは、アンケートが記名式だった、という点です。私の数少ない経験でも、記名式で評価を「やや不満」や「不満」にする生徒はまずいません。それが自分の成績に影響するかもしれない、とか、今後も会う先生に嫌な印象を与えてしまうのは避けたい、といったことを考えますから。ですので、記名式の評価の場合、「普通」と書いてあるのは「悪い」と考えるぐらいの方がよいのではと思います。
その逆に、無記名式の場合は記名式よりも評価は普通低く出ますし、より厳しい意見が寄せられます。たとえば、私が授業を担当しているエッセンスの場合、2か月ごとに授業評価があるのですが、用紙に名前は書いても書かなくても構わないので、時にはこちらが落ち込むような評価やコメントが寄せられる場合もあります(すべてのアンケートに講師は目を通します)。もちろん、その厳しい意見が的を射ていれば、講師としては改善しなければいけません。エッセンスの場合、授業評価で給料が決まり、低評価が続くと講師は解雇になるので、それが授業の質を保つのに役立っているという側面もあります。
これは実際に講師になってから気づいたことですが、授業やセミナー後のアンケートで、数パーセントの悪い評価やコメントがあると、大多数のよい評価が頭の中から消えて、悪い評価のことばかりが頭に残ってかなりのダメージを受けます。100%の人に満足してもらうのは不可能と頭では分かっていても、「顔に縦線が入ったちびまる子ちゃん」状態でズーンと気分が落ち込んでしまうのです。
考えてみれば、サラリーマン時代は、個人に対して厳しい意見が寄せられることってほとんどありませんでした。たとえば、営業マンがお客様から評価を受けることは通常ありません。皆さんがもし営業マンで、「10段階で3」「あれだったらメールのやり取りで十分」「他社の営業マンと比べて劣る」「他の人に変えてほしい」などと書かれたお客様評価を見たらさすがに落ち込みますよね。
この点に関して、有名講師の方々が書かれた本を読むと、「9割満足してもらえればOK」とか、「誹謗中傷に近い意見は気にしないこと」などと書かれていますが、なかなかそういう気持ちになるのは難しいんですよね。この春休みに、先輩講師の方々にアドバイスを求めたところ、皆さん共通して、「そりゃ人間誰でも落ち込みますよ。でも場数を踏むと次第に慣れてきますよ」とおっしゃっていました。ストレス耐性が増してくるんでしょうね。
と、今日は講師の仕事の厳しい一面をご紹介しました。まあサラリーマンにはサラリーマンの厳しさがあるのは私も知っています。どんな仕事にも楽しい面と厳しい面があるのは当然です。高評価におごらず、建設的な意見には真摯に耳を傾け、流すべきところは流す、といった自己管理が大切なんでしょうね。
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聞いた話ですが、アメリカのイェール大学で2000人の卒業生を対象に調査したところ、「あなたは目標をもっていますか?」「それを計画しましたか?」「それを書きましたか?」の三つの質問すべてにイエスと答えた人は3パーセントだけ。それから二十年後(中略)、驚くべきことに、2000人の総収入の9割をその3パーセントの人たちが占めていたのです。
ちょうど次の日が、千葉大学の新入生相手のTOEICガイダンスだったので、目標設定の重要さを説明するにはいい例かも、と思ったのですが、念のため、本当にあった話なのかどうかを調べてみることにしました。
最初に日本語のキーワードで検索すると、同様の調査結果を引き合いに出しているサイトがいくつか見つかったのですが、そこでは調査の参加者が「2000人」ではなく「200人」になっていました。うーむ。にわかに信憑性に疑惑が。
そこで、今度は英語で検索してみると、Yale大学の公式HPに同様の質問が寄せられていて、以下の通り回答がありました。
Question: Where can I find the Yale study from 1953 about goal-setting?
Answer: It has been determined that no "goals study" of the Class of 1953 actually occurred. In recent years, we have received a number of requests for information on a reported study based on a survey administered to the Class of 1953 in their senior year and a follow-up study conducted ten years later. This study has been described as how one's goals at graduation related to success and annual incomes achieved during the period. The secretary of the Class of 1953, who had served in that capacity for many years, did not know of the study, nor did any of the fellow class members he questioned. In addition, a number of Yale administrators were consulted and the records of various offices were examined in an effort to document the reported study. There was no relevant record, nor did anyone recall the purported study of the Class of 1953, or any other class.
石川さんの本でも「聞いた話ですが」と書かれていますが、どうもこれは都市伝説だったようです。もちろん翌日のガイダンスではこの例は出しませんでした。この本を読まれた方、念のため上記ご確認ください。こうやって都市伝説って広まっていくんでしょうね。
それにしても、この程度の長さの英文を見ると、つい空所を3箇所あけて問題を作りたくなるのは職業病ですね(笑)
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『プロアナウンサーの「伝える技術」』(石川顕著・PHP新書)
昨日読んだ本です。書店でタイトルに惹かれ、中身をパラパラと立ち読みしていて思い出したのですが、この方は、私が子供のころ野球中継でよくその声を耳にした実況アナウンサーでした。当時は、TVの野球中継が時間切れになると、ラジオの野球中継に切り替えていたのですが、放送局がTBSラジオだと、「実況石川顕(あきら)でお送りしています」という声が中継中にたびたび流れていたんです。お名前を拝見した途端、扇風機を回しながら、スイカを食べつつラジオを家族全員で聞いていた少年時代の夏の夜の記憶が鮮やかに蘇りました。
この本のタイトルにもありますが、連日の震災の報道を見ていると、「伝える技術」の大切さを強く感じます。伝える側のスキルの違いによって、聞く側はいらいらしたり、安心したりしますよね。この本の中では、石川さんが長年現場で培われた実用的な「伝える技術」がたくさん盛り込まれていて、とても参考になりました。以下でいくつか印象的な部分をご紹介します。
いい声を出す基本は「姿勢」です。
まず大切なポイントは、話すスピードです。(中略) 早くてよいことは一つもありません。
話術は「間術」です。“間”のとれない話し手を、プロは「間抜け」と言います(笑)。
言いにくい言葉は、思いきって単語を区切って、“間”をとれば大丈夫。プレゼンテーションやスピーチなどの本番で、焦らず、とちらないためのテクニックです。
プレゼンテーションは聞き手が主役。事前に相手のニーズや情報を知ることが大切です。自分の主張だけでは真の意味で「伝える」ことにはなりません。
お笑い芸人と同じやり方でウケをねらう必要はありません。(中略)みんなに笑ってもらおうという意識自体が大切なのです。
「しゃべりは人なり、言葉は人なり」と私は思っています。つまり、人間性がすべてなのです。精神論と技術論、どちらが重要かと聞かれたら、私はきっぱり精神論と断言します。
究極の「伝える技術」は、その人の人間力そのものなのです。(中略)五十年近くスポーツアナウンサーを続けてわかったことは、まさにこれなんです。
この本を読み進めながら、自分にはこれが足りない、これも足りない、と反省点ばかりだったのですが、最後の部分で救われた気がしました。もちろん「伝える技術」を向上させる努力は怠ってはいけませんが、最も大切なのは伝える側の気持ちですよね。これは私が普段講師の仕事をしていて感じていることでもあります。
今日は千葉大で新入生へのTOEICガイダンスでした。明日はエッセンスの新タームの授業初日で、明海大学と神田外語学院の新学期の授業ももうすぐ始まります。気持ちも新たに生徒のモチベーションUPにつながる授業ができるよう頑張りたいです。
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