その後、大江戸線で新宿に移動し、紀伊国屋のTOEIC本コーナーでライバル本をチェック。神崎さんの本をさりげなく平積みしつつ(笑)、ああでもないこうでもないと書棚に並ぶTOEIC本について二人でマニアックな会話をしていたら、突然、そばにいた大学生らしきカップルが、「すいません。TOEIC初心者なんですけど、どの本を買っていいか分からなくて」と話しかけてきました。よほど我々の超マニアックな会話に興味を引かれたんでしょうね(笑) 私はその場を離れて他の売り場の本をチェックしていたので、神崎さんが何を勧められたのかは分かりませんが、きっと二人仲良く「神崎式」を持ってレジに並んだことでしょう。
昨日のセミナーは、TOEFLの問題製作にも関わったという、言語能力を測定するテストの研究者として、世界的に著名な方の講義だったのですが、非常に興味深かったのが、テストを走り高跳びにたとえた部分でした。テストは、受験者それぞれの能力に応じて、適切な結果が出るように設計されなければいけません。走り高跳びで、普段1.5mしか跳べない選手が、本番で急に2m跳べたり、その逆はあり得ませんよね。それと同じことです。当然、バーの設定が高すぎても低すぎても学習者にとっては適切な試験とは言えません。
また、テストのスコアは、ある受験者が、テストで設計された課題をいかにこなしたかを示しているにすぎない、といった基本的なことも非常に参考になりました。他の競技の選手が走り高跳びに挑んでも、専門の選手には勝てないですよね。でもそれは求められている能力が違うから当然です。とはいえ、アスリートとしての基礎能力が高いわけですから、ちょっと練習をすれば、素人が跳べない高さはクリアできるはずです。じゃあ砲丸投げの選手や力士はどうなんだ、などといちゃもんをつけたい方は、ちょっと都合が悪いのでどっかに行っててください。
以前、ブログでもご紹介したのですが、昔、仕事で将棋の羽生名人にお会いした時、このようなことをおっしゃっていました。「走り高跳びで、1.5m跳べる人は、2mのバーを見てもプレッシャーは感じません。それは、跳べないと分かっているからです。逆に、1mのバーを見ても、跳べると分かっているのでプレッシャーはかかりません。ところが、1.6mのバーを見るとプレッシャーがかかります。それは、跳べるかもしれないからです。つまり、プレッシャーがかかるということは、自分がそれだけ目標に近づいているのだと思えばいいんです」と。
常人では考えられないプレッシャーのかかる対局で驚異的な勝率を挙げている羽生さんの言葉だけに、やさしい口調の中に秘められた気迫や重みをひしひしと感じたことを今でも覚えています。
TOEICでもきっと同じです。目標点数に達しなくて悔しいということは、それだけ目標に近づいているということです。程遠かったら悔しさは感じません。なかなか目標点数に達しなくて気持ちが折れそうな時や、プレッシャーを感じた時は、「こういう気持ちになるのは、目標にそれだけ近づいているからなんだ」とポジティブに考えましょう。
こうしてみると、TOEICのバーって、努力すれば跳べる高さにうまく設定されているのが、受験者にとって人気の秘密なのではと思います。ETSの中の人の絶妙なバーセッティングはまさに匠の技ですね。
ちなみに、昨日のセミナーで、ヒロ前田さんのTOEIC指導者セミナーでご一緒した方と再会したのですが、「TEXさんのブログ、学生に紹介してますよ」とのお言葉を頂きました。うーん。あまり青少年の健全な育成に反するようなことは書けませんね。「黒テックスのTOEIC裏日記」でも立ち上げるしかないなあ。
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