さて今日は、英語学習者の皆さん、特に、「自分は何のために英語を勉強しているのだろうか」「英語の発音がいつまでたってもうまくならない」などと悩んでいる方に是非とも読んで頂きたい本のご紹介です。今年読んだ英語学習本の中で個人的ベスト1です。
英語のバカヤロー! 「英語の壁」に挑んだ12人の日本人(古屋裕子編 EARTH STAR BOOKS)
編者の古谷さんは、インドのムンバイにあるクリムゾンインタラクティブという会社のマーケティング部長です。この会社は、英文校正サービスの大手で、日本人の研究者やビジネスマンの英語論文やレポートをネイティブが添削するサービスを手掛けているのですが、この会社に仕事を得て2007年にインドに渡った当時、古屋さん自身、英語が苦手で大きな挫折感を味わったとのこと。
そんな古屋さんが、自分自身が前に進むヒントを得るため、帰国子女ではない日本の著名な研究者12人に、英語の壁とどのように闘ってきたのかについてインタビューし、それをまとめたのがこの本です。よくある「英語の達人」と呼ばれる方々がいかにして英語を学んできたかを語った本ではなく、英語はジャパニーズイングリッシュでも、それぞれの分野で、堂々とネイティブに混じって超一流の仕事を成し遂げてきた方々の話が聞けるので、英語学習者の皆さんなら、読んで必ず得られるものがあると思います。
この本に登場するのは、次の12人の方々です。
養老孟司・解剖学者
竹中平蔵・経済学博士
中村修二・電子工学者
上野千鶴子・社会学者
坂東眞理子・昭和女子大学学長
浅野史郎・前宮城県知事
明石康・元国連事務次長
本川達雄・生物学者
酒井啓子・中東研究者
松沢哲郎・動物心理学者
古川聡・宇宙飛行士
福島孝徳・脳神経外科医
すごいメンバーですよね。とはいえ、当初はインタビューは難航したそうです。古屋さんご自身が話を聞いてみたいと思った人に片っ端から声をかけたものの、無名の出版社からのインタビューの申し出に、最初の半年間はインタビューを引き受けてくれる人がいなかったとのこと。あきらめかけた彼女に、初めてインタビューOKの返事をくれたのが養老孟司さんだったそうです。
その養老孟司さんのインタビューの中から印象的な部分を抜粋し、ご紹介します。
ニューヨークへ行ったら、子どもでもギャングでも英語をしゃべっている。英語をしゃべるだけなら、たいしたことではないでしょ。忘れてはいけないのは、英語はあくまで自分が語りかけたいことを伝える手段であって、英語をしゃべること自体が目的ではないということ。
今、英語ブームと言われていますが、そんなに英語が上手になって何かいいことがあるのかと、いつも思いますよ。人に話して聞かせたいような中身はそんなにないじゃない。みんな目的をわきに置いて、手段だけを磨いている。そんなに靴を磨いてどこへ行くんですか。行くべきすてきなパーティーもないのに。
自分の中で、英語の壁を感じたり、うまく話せなくて落ち込んだ時、手元に置いておいて読み返したくなる一冊でした。「日本人なんだからジャパニーズイングリッシュでいい。問題はいかに流暢に話すかではなくて、話の中身。日本人なんだから、英語のネイティブスピーカーにはなれないし、自分の言いたいことを100%英語で伝えるのは無理。でも、自分の話している中身が素晴らしければ、相手は話を聞こうとしてくれる」 そう思えば英語を話すとき、気が少し楽になるかもしれません。
最後に、元国連事務次長の明石康さんの言葉を紹介します。
ただ楽しく英会話ができればいいとか、「英語力をつけること」だけを目標として英語を勉強する人たちは、それだけではさびしいと思うんです。人間と人間の相互理解、真剣勝負の対話には、語学力も大事ですが、それは二義的なもので、自分の知識や教養、世界観とか、人生に向き合う真剣さだとか、そういうすべてをひっくるめて、人間としての総合力が問われることを忘れてはならないと思います。
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