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涙のクジラ構文
一日遅れで恐縮ですが、

Happy Christmas!

って、いまさら何を言うとんじゃあ、ですよね。皆さんどんなクリスマスを過ごされたでしょうか。皆さんきっと私と同じく英語の勉強に励まれていたことと思います(無理に微笑)。

さて、世間がクリスマスで浮かれているこの時期は、センター試験も間近に迫り、受験生にとっては最後の追い込み期間です。つい先日も、電車の中で、一心不乱に英語の構文集らしきものを読んでいる制服姿の女子高生が隣に立っていました。彼女が読んでいるのは、左側に英文、右側に和訳が書かれている、学校の先生が作った自作の教材のようです。

「どれどれ、分からないところがあったら、TOEIC満点のこのおじさんが教えてあげるよ。フフフ」などとひそかに心の中で思いつつ(犯罪者)、彼女がどういう文章を覚えているのかを横目で見てみると、

A whale is no more a fish than a horse is.
(鯨が魚じゃないのは馬が魚じゃないと同じだ)

A whale is no less a mammal than a horse is.
(くじらが哺乳類なのは、馬が哺乳類なのと同じだ)

う、うわ、懐かしい。これは私も学生時代に覚えさせられた「クジラ構文」ではありませんか!

高校生の時、暗記しようとしたけど意味不明だったんですよね。確かこれ以外に、「not more than」や、「not so much as」なんかもあったりして、もう訳がわかりませんでした。仕方なく数学の公式のように暗記した悪夢がよみがえります。今でもクジラさんが生きていたとは感慨深くもありましたが、同時に、こんな英文を覚えさせられて大変だなあと同情してしまいました。「こんな英文普通は使わないよなあ」と思ってしまったのです。

とまあ、その時はその程度にしか思わず、そのこともほとんど忘れていたのですが、今日、ケリー伊藤さん(テリーじゃないよ)の「英語ライティング講座入門」を読んでいると、上の「no less than」の例が取り上げられ、こう書かれていました。

皆さんが暗記させられたはずの有名な「くじらの構文」も実際には使わないと断言してしまいます。

や、やっぱり!どうりでTOEICでも見たことありません。まだ、no more thanの方は使われるのではと思いますが、それにしても「クジラ構文」は文例としてどうなのでしょうか。もっと実際に使われそうな文例がいくらでもあるはずですし、それを覚えた方がよほど有意義だと思います。返って訳が分からなくなってしまいますよね。クジラと馬が夢に出てきてうなされた経験のある高校生は全国でのべ数百万人に達するとの統計も出ています(TEX加藤調べ)。

興味があったのでちょっとこの「クジラ構文」についてネットで調べてみると、学者さんが論文を発表したり、「こんなの使わない」「いや使う」と議論が交わされたりと、読んでいて結構面白かったですね。中でも一番、「なるほど」と思ったのが、大西泰斗さんの「鯨の悪夢」というエッセイです。詳細はリンク先をご覧頂くとして、要点を抜粋してご紹介します。

悪意のない、こうした不用心と鈍感が学習者からどれだけの機会を奪っているかをわれわれは考える必要がある。そして学習者に与えるべきは十分に吟味された例文であるべきだ。表現の感覚を伝えて余りある細心の例文であるべきなのだ。

文法書には、もはや使われない、自然ではない、不親切で鈍感な例文が溢れかえっている。誰もが気がついているにもかかわらず目をつぶっている事実。われわれはその事実に目を向ける必要がある。切実に。

鯨は海に帰そう。


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